フィッシュ&チップスとアルデンテ

「スコットランドでアルデンテは食べられない。」これはグラスゴーに住む多くの日本人が話すこと。でも、 いちおうイタリア人の名誉のために言っておきますが、 お店の人に「アルデンテで」とお願いすると、ちゃんとアルデンテのパスタを提供してくれます。要はイタリア人がスコットランド人の好みに合わせて、 普段はソフトなパスタを茹でているだけなのだと思っています。

f:id:korisugla:20190602003936p:image

では、 なぜスコットランドではソフトなパスタを出すようになったのか? その謎を解くヒントが、フィッシュ& チップス店にありました。

f:id:korisugla:20190602004016j:image

スコットランドには多くの美味しいフィッシュ&チップス店があり、 愛情を込めチッピーと呼ばれています。そして私のお気に入りチッピーにMerchant Chippieというお店があり、『The winner of Scotland’s best fish & chips - Italian awards』という受賞ロゴを誇らしげに掲げています。 はじめはスルーしていたのですが、何回か通ううちに、 なぜチッピーでイタリアンアワード?と思うようになりました。

f:id:korisugla:20190602004047p:image

理由はありました。それはItalian Scots。 イタリアに祖先があり、スコットランドに住む人々のことです。Italian Scotsの大きな波は、1890年代。 当時イタリアでは干ばつ、飢餓、貧困が酷く、 より良い生活を求め、 多くのイタリア人がイギリスへ移民。グラスゴーにはイギリスの中で3番目に大きいイタリアンコミュニティが存在したと言います。 その後、第二次世界大戦時、 イタリアとイギリスは敵対国となったことから多くの悲劇がありましたが、それでもItalian Scotsは多種多様な業界で活躍し続け、今は特に食の世界で存在感を示しています。

f:id:korisugla:20190602003959j:image

イギリスにおける食の代表といえば、フィッシュ&チップス。Italian Scotsは、1890年代から1914年までの間に、 スコットランド中にスコットランド人の大好きなチッピーをオープンし、その世界を占拠していきました。 しかし、 なぜイタリア人は自分たちのイタリア食にこだわらなかったのでしょう? イタリア人は生き残るために、スコットランド人の好みに合わせたのです。 イタリアのアルデンテなパスタにこだわらず、 市場から新鮮な魚を仕入れて、 スコットランド人の大好きなフィッシュ&チップスを毎日毎日揚げたのです。そして今や、 イタリア移民による美味しいフィッシュ&チップスはスコットランドで欠かせないものになりました。